真夜中に生卵を落としてやりたい衝動に駆られる。

ガー、カコンッ。

 
そんなような音で目が覚めた。
時計に目をやると夜中の2時過ぎ....
気のせいかな?
そのまま寝ようと目を閉じると
また
 
ガー、カコンッ!
 
気のせいなんかじゃない!
 
ベッドの中で身を固くしながらどこから聞こえてくるのかじっと考える。
 
外だ。
 
わたしの部屋はマンションの東の角部屋。
敷地の東側には細い道1本挟んで神社がある。
そこら辺りから聞こえてくる気がする。
よく耳をすますと低い話し声も聞こえてくるような。
 
神社は以前から若者のたまり場になる時もあり、朝お参りに行くとタバコの吸殻や、なぜか短い髪の毛が散らばってる事もあった。(坊主にされる罰ゲームかな?)
 
 
そんな事を考えてる間も定期的にガー、カコンッは聞こえてくる。
 
1分間に3、4回のペース。
ガー、カコンッ
ガー、カココンッ
ガー、カッコンッ
 
わりと大きな音なので無視して眠ることも出来ない!
一体なんなのだ!
 
 
想像してみる。
ガーはもしかしたら神社の御神木をチェーンソーかなんかで切ってる音?
カコンッは神社の手水舎に置いてある柄杓を置く音?
それにしたって繋がりなさすぎるし、こんな連続して鳴るなんておかしい。
 
はぁ、気になる。
うるさくて眠れん。
こんなにうるさいのに他の住民は気づいていないの?わりと住宅密集地なのに!
 
寒いからベッドから出たくないよー
でもこのままじゃうるさくて眠れないよー
寒いよー
気になるよー
うるさいよー
 
仕方ないので意を決してベッドから出て部屋の南側の窓から身体を乗り出し神社の境内を覗いてみる。
真っ暗。
よーく目を凝らしても人の気配すらない。
え、じゃあどこからよ?
 
その時またあの音が!
ガー、カコンッ
今度は窓を開けていたのでよく聞こえた!
道1本挟んだ向こう側なんて離れた所ではではなくほんとすぐ近く!
マンションの敷地内から聞こえきてる!
 
すぐに南側の窓を閉め、部屋の東側にある換気用の押し出して開けるタイプの小窓をゆっくりと開けて真下を覗く。
 
ガー、カコンッ。
 
 
はいはいなるほどそういうことですか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
若者2人がスケボーやってました...
 
ガーはスケボーで滑る音。
カコンッは駐車場のタイヤ留めを飛び越えて技を決める時に出る音。
技が決まる度に低い声で笑い合う2人。
すごく楽しそう。
 
 
 
 
 
でもさ
 
 
 
 
 
ねぇ、ばかなの?
 
こんな日曜の夜中にマンションの駐車場で何しとんじゃー!
こっちは明日から仕事なんじゃ!
 
さて、どうしてやろう!
冷蔵庫に賞味期限切れの生卵が入ってることを思い出す。
込み上げて溢れ出しそうな、生卵を割り落としてやりたい気持ちをぐっと堪えて警察に通報。
 
 
事件ですか?事故ですか?
 
多分事件です。若者がマンションの敷地内の駐車場で楽しそうにスケボーやってます。
 
すぐ向かわせます。ごとうさんのお宅にも警察官を向かわせたほうがいいですか?
 
いや私のところには来なくて大丈夫なんでとにかく静かにさせてくださいぃ...
 
 
その間もずっとスケボーの音は鳴り響く。
寒いし目も覚めちゃったので小窓からずっと若者を観察。
何回も何回も交代で滑る。
得意げな笑い声。
スマホで動画まで撮りだしたよ。
上から覗かれてる事には全然気づいてないみたい。
あー生卵落としてやりたい。
早く警察来ないかな。
 
 
最初のガー、カコンッから1時間くらいが経過して若者達も満足したらしくあと1回ずつやったら帰るかーなんて話してる。
あー警察間に合わんかったな。
そして2人はおつかれ!なんて労いながら別々の方向の闇に消えていった午前3時過ぎ。
 
 
 
 
捕物を見られずちょっとがっかりしながらベッドに入り冷えた身体を丸くして朝までの残り少ない時間を惜しむように眠りにつきました。
あんな非日常なことがあっても静かになればちゃんと寝られるもんですね。
 
それにしても生卵落としてやりたかったな。